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印刷会社の新規事業の事例|強みの棚卸しを、できることから始めた理由

お客様から頼まれたものを刷ってきた会社が、自分たちの商品を作り始めると、次に止まるのは売り方です。どこに置くか、どう知らせるか、値段はどうするか。

外に相談すると、売り方の話から始まることが多いと思います。けれども、何のために商品を作ったのかが決まっていないと、売り方の答えも決まりません。

この記事では、あさぎが支援している地方の印刷会社で、自社の商品とブランドづくりをどの順番で進めたかを書きます。会社の名前や場所、商品は伏せています。書くのは、あさぎが考えたことと、やったことが中心です。支援はまだ途中で、結果は出ていません。そのことも含めて書きます。

  1. 目的を、商品の売上と本業の相談に分けた
  2. 強みの棚卸しは、できることから始めた
  3. 聞き取りは、話しやすさを先に置いた
  4. 途中で、やることが増えそうになったとき
  5. つまずいたところ
  6. 頼む前に確かめておくとよいこと
この記事の要点の流れ。困りごと、自社の商品を作り始めたが、何から手を付ければいいか分からない。進め方、1 目的を、商品の売上と本業の相談に分ける。2 強みの棚卸しは、できることから始める。3 聞き取りは、話しやすさを先に置く。4 増えそうなことは、いつやるかを案にして決める。手に入るもの、次に何に時間とお金を使うかを、社内で決められる状態。
この記事の要点の流れです。タップすると大きく開きます。

1. 目的を、商品の売上と本業の相談に分けた

印刷会社が自社の商品を作る目的は、大きく2つに分かれます。商品そのものを売って利益を出すこと。もう1つは、商品をきっかけに「この会社に頼めば面白いものが作れそうだ」と思ってもらい、本業の印刷の相談が来ることです。

どちらを主に置くかで、やることが変わります。商品を売るなら、売り場と値段と数の話が中心になります。本業の相談につなげるなら、その商品を見た会社が、次に誰へどう連絡してくるかを先に考えることになります。

支援を始める前の面談で、この会社が主に置いているのは、本業の相談のほうだと分かりました。

ただ、本業の相談がいつ、何件来るかは、支援の期間の中では決めきれません。相手の会社の予算や時期が重なって決まるからです。そこで、支援の期間で目指すゴールを、別に考えることにしました。

  • 次に何に時間とお金を使うかを、社内で決められる状態にする

このゴールは、次の定例で成果物と一緒にお出しして、確かめていただく予定です。

売上を何倍にする、という約束はしないことも、最初の打ち合わせでお伝えしています。

2. 強みの棚卸しは、できることから始めた

ブランドの言葉を整える前に、まず強みを棚卸しすることにしました。そのとき、棚卸しを2つに分けています。

分け方中身
できること持っている工程や設備、任せられる協力先、よその会社が嫌がる細かい仕事
持っているもの会社の歴史、昔の図案や刷り見本、取引先、すでにある商品

先に取りかかったのは、できることのほうです。本業の相談は、何ができる会社なのかが伝わらないと来ません。歴史や物語がきれいに整っても、それだけでは発注にはつながりにくいと考えました。

もう1つ決めたのは、強みを聞き取りだけで集めないことです。毎日やっている仕事ほど、社内では当たり前になっていて、強みだと思われていません。「御社の強みは何ですか」と聞いても、答えが出てこないことが多いのです。

そこで、工場や倉庫の様子を写真や動画で見せていただくようお願いし、会社にうかがって実際に見る日も取りました。見て気づいたことを、あとから「これはどうやって作っているんですか」と聞くほうが、話が具体的になります。

3. 聞き取りは、話しやすさを先に置いた

プロジェクトのメンバーの方には、お一人30分ずつ、オンラインでお話をうかがいました。

この聞き取りでいちばんに置いたのは、情報を集めることより、話しやすい相手だと分かっていただくことです。外から来た人に、いきなり自分の仕事の強みや困りごとを話すのは、誰にとっても身構えるものです。支援はこの先も続くので、最初に信頼を損ねると、あとで本当に聞きたいことが聞けなくなります。

そのために決めたことは3つです。

  • 録音の断りは、1文だけにする。理由を重ねて説明しない
  • 用意した質問を、全部聞くことを目標にしない。その場で出てきた話を広げる
  • まとめは、誰が何を話したかを書かず、仕事の中身ごとに分けてお返しする

最後の1つは特に気をつけました。名前がついたまとめは、社内で回し読みされたときに、話した人が困ることがあります。仕事の中身ごとに並べておけば、ほかの部署の方が読んでも、自分の仕事と並べて読めます。

4. 途中で、やることが増えそうになったとき

最初の打ち合わせで、商品をどこで買えるか尋ねられても、案内できるページが無いことが話に上がりました。受け皿になるページの進め方を、こちらから提案することになりました。

ページが要ることは確かでした。ただ、支援の時間には限りがあり、ページに時間を使えば、その分ほかにできることが減ります。そこで、作るかどうかは問わず、いつ作るかを3つの案にしてお出ししました。

  • 強みの棚卸しと並行して、すぐに作り始める
  • 棚卸しが終わってから、もともと予定していた、会社のお客様に向けた入り口づくりの中で作る
  • 買える場所と問い合わせ先だけを載せた簡単な1枚を先に出し、あとで作り込む

おすすめは2つめにしました。ページに載せる中身は、棚卸しで出てくる強みそのものです。順番を逆にすると、載せるものがないまま形だけができてしまいます。

そのうえで、切り替える条件も添えています。買える場所を尋ねられることが増えて、取りこぼしが実際に出ているなら、二度手間を払ってでも3つめの案で先に置く。どの案にするかは、次の定例までに決めていただくことにしています。

5. つまずいたところ

強みの候補に数えていた工程が、社外の仕事だった

支援を始める前に、商品の現物を手に取って、ある仕上げの工程の細かさを強みの候補に挙げていました。

調べていくうちに、その工程は社外でやっているのかもしれない、と気になり始めました。そこで最初の打ち合わせで、その商品をどこで作っているかをうかがうと、専門の協力先にお願いしている仕事だと分かりました。確かめないまま「御社の技術です」と書いていたら、事実と違うことを外に出すところでした。

そこで、強みの書き方を組み替えました。その技術を持つ協力先と組み、頼み続けてこられたこと自体を、できることの1つとして数えています。作れる人が限られる仕事を任せられる関係は、すぐには真似できません。

いまは、商品ごとに「この工程はどこまで社内ですか」と、工程を1つずつ分けてうかがうようにしています。

結果について

支援はまだ途中です。商品がどれだけ手に取られるかは、まだ分かりません。本業の相談につながったかどうかも、これからです。支援の終わりに、棚卸しの結果と次に何に時間とお金を使うかを、社内で決められる形にしてお渡しする予定です。

6. 頼む前に確かめておくとよいこと

自社の商品やブランドづくりを外に頼むとき、相手に聞いておくとよいことを3つ挙げます。

目的を、どこに置くつもりですか

商品の売上を目的にするのか、本業の相談の入り口にするのかで、やることが変わります。この問いを最初に出してくる相手のほうが、途中で話がぶれません。

強みを、どうやって確かめますか

聞き取りだけで強みを集めようとする相手だと、社内で当たり前になっていることが抜け落ちます。現場を見に来るか、写真や動画で見ようとするかを聞いてみてください。

やることが増えたら、どう決めますか

支援の途中で、やりたいことはたいてい増えます。そのとき、全部を引き受けると言う相手より、何を後にするかを案にして出してくれる相手のほうが、費用も時間も読みやすくなります。

頼み方は3つあります

ここまでの進め方は、あさぎに頼む以外に、自分たちで進める方法や、専門の会社に頼む方法でも形にできます。比べると次のとおりです。

あさぎに頼む自力で進める(AIも使って)専門の会社に頼む
向いている会社強みの棚卸しから始めて、いずれ社内で回したい社内に、まとめ役を務められる人がいるブランドの言葉からロゴや冊子まで、形にして一度に作りたい
よいところ目的の分け方と棚卸しの順番を一緒に決め、社内で決められるところまで一緒に動く費用がいちばん小さい。社内の言葉のまま残る人数と体制があり、調査からデザインまで一度に頼める
気をつけること引き受けられる件数に限りがある。デザインや印刷は、別に手配が要ることがある身内だと、強みに気づきにくい。AIが整えるのは文章までで、材料は人が集める費用が大きくなりやすい。作ったあとの使い方は自分たちで考える
費用の目安月10時間・5万円から(税別)道具代は月数千円(Claude Proは月20ドル・税別)。いちばん大きいのは話を聞いてまとめる人の時間戦略づくりをまとめて頼むと110万円ほどから(ロゴや会社の考えを表す言葉まで含めると550万円からの会社もある)。月ごとの伴走は月20万〜25万円ほどから。最低6か月の契約の会社もある

専門の会社の費用は、料金を公開している会社の料金ページ(2026年9月23日に確認)から、同じ種類のサービスで公開されているプランを並べた幅です(お試しの安いプランがある会社もあります)。税の扱いは会社によって違います。含まれる作業(期間や作るもの)も、会社ごとに違います。道具代は各サービスの公式の料金ページによります。

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